古代アレクサンドリアのカバのテッセラ
これは古代のテッセラ(Tessera)というものです。カバにまたがるナイル神が描かれています。
これは2~3世紀(西暦100~200年代)ローマ帝国時代のエジプト属州・アレクサンドリアで見つかったもの。大きさは21mm。重さ4.6g。材質は鉛です。
お金のように見えますが,これはお金ではありません。テッセラは「モザイクを作る小片」の意味なのですが,古代ローマ帝国ではチケットとしてこのような鉛のコイン状のものが使われていて,これも現在ではテッセラと呼ばれています。
テッセラは,例えば,剣闘士の試合のチケットだったり,皇帝や地方政府が配るパンや小麦を受け取るためのクーポン券(配給切符)として庶民に配られたり,広く使われていました。
裏面(カバ目線で表裏を判定!)左は,デュオニューソス(Dionȳsos)という神様。ギリシャ神話の豊穣・葡萄酒・酩酊の神だそうです。豊かな実りをもたらしますが,酒好きの酔っ払いってことなんでしょうね。
このデュオニューソスに冠を授けているのが,右側のニケ(Nīkē)です。ニケもギリシャ神話の神様。勝利の神です。翼のある女神として描かれることが多く,ルーブル美術館の「サモトラケのニケ像」が有名です。ローマ帝国では「ビクトリア」として広く信仰されていました。
広く庶民が手にするテッセラにカバが描かれていたのは,やはりアレクサンドリアではナイルに泳ぐカバがおなじみだったのでしょう。